1000HIT記念小説

僕の好きな君

君が酔って僕によりかかって眠ってしまった横で、胸が高鳴って眠れない。
頬に君の前髪があたると、それだけでドキドキしてしまう・・・。
おかしいよね、いい歳した男が。
先に好きになってしまったのは僕なのかな?
昔の自分は、偽りだらけだった・・・。
その為に付き合っていた女の子にまで恥をかかせてしまった事もある。
自分が信じられなくて、随分悩んだりもした。
人の道から外れたと信じ込んでいた僕は、この先の人生までもごまかして生きて行くのだと思っていた。
苦しくて苦しくて、だけどどうする事も出来なくて・・・。
けれど、そんな僕の心を君は溶かしてくれたね。
「そいつに告らなかったの?」
そう君は言っていたけれど、そんな勇気は僕にはなかった。
彼に惹かれて行く度に、気付かれるんじゃないかと、怖くて堪らなかった。
結局は仕事も住む場所も捨ててしまったけれど・・・。
でも今はそれで良かったと思っている。
だって、そのお陰で君と出会えたのだから・・・。
彼と君は顔も性格もまるで違う。
人を好きになるって事は、理屈じゃないんだね。
物怖じしない、少しだけ皮肉の混じった僕を見つめる目に、たぶんやられていたんだと思う。
「好きだよ、夏紀さん。」
そう言われた瞬間、何かがストンと落ちた気がした。
君の唇が僕に触れた時、何かが変わった。
今まで自分が感じていた痛みが流れて行くような気がした。
僕は恥ずかしい事に、26歳にもなるこの歳まで誰とも経験がない。
彼女と呼んでいた女の子には、本当に悪い事をしたと思っている。
それは結局、自分は普通なんだと確認するための道具に過ぎなかったのだから・・・。
今思うと、「普通」ってどういう事なのだろう?
男性だから女性を愛するのが「普通」?
同性ならば「異常」?
僕のそんな悩みも君は一笑して終わらせる。
君を見ていると、自分がちっぽけな人間に思えてくるよ。
その明快な姿勢に僕は、間違っていないと確信する。
君の唇に、白い素肌に、胸に触れる度に僕は震えている。
気付いているだろうか・・・?
ピンクに染まった表情に、声に、僕は理性を失ってゆく。
そんな拙い愛撫にも、君は答えてくれたね。
それでも自信なんか全然なくて、不器用な自分の不安を、君は笑い飛ばした。
本気になってしまったから、余計心配。
君は僕の羞恥な部分を、少し意地悪に引き出すのがうまい。
赤面する僕を、「可愛い」と言う君。
どっちが年上だか解らなくなるよ、本当に。
けれど、そういう君が愛しい。
隣で眠るその唇にそっと自分の唇を重ねる。
「・・・・・・ん・・・・・。」
薄く君の目が開いた。
「あ・・・起こしちゃった?ごめんね。」
「今・・・何時・・・?」
腕時計を見ると、もう二時を過ぎていた。
「ベッド行こうよ・・・。」
そう言われて胸の鼓動が一瞬強く響いてしまった。
そういう意味じゃないと解っているのに・・・。
「夏紀さん、今、ドキッとしただろ?」
こういう勘がするどい。
「そ・・・そんなこと・・・。」
慌てて否定をしたけれど、効果ないね、きっと。
僕の目をじっと見つめて君は言う。
「俺はしたくなっちゃった。」
うらやましいよ、そんなに素直に自分を出せるのって・・・。
「夏紀さんはどうなの?」
もうきっと、僕の顔色はさっきと変わってる。

僕の気持ちを解っているくせに、言葉で言わせたがる。
「・・・したいよ・・・。」
恥ずかしくて、小さな声になってしまう。
「じゃ、決まり!」
笑って君は着ていたシャツを脱いでいく。
その姿を見るだけで、僕の身体は変化してしまう。
そして、そっと自分の手を君の頬に持っていき、顔を近づける。
出会いは、きっと人が聞いたらすごく陳腐に聞こえるかもしれない。
でも、僕にとっては奇跡のようなもの。
君という人間に会えて良かった・・・。
願わくば君もそう思ってくれていますように・・・。
                              おわり。

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