「いい加減にしてくれ!!」
彼の怒鳴る姿を見たのは初めてだった。
それ以上何も言えずにいると、僕の腕を振りほどき、そのまま彼は僕から離れて行った・・・。

彼がそんなに僕を重荷に感じてたなんて、思いもしてなかったんだ。
いつだって優しくて、怒ったことなんかなくて・・・、それって全部我慢してたって事なんだろうか?
僕らはどれくらいキスしたんだろう?
どれくらい身体を重ねたっけ・・・?
あの時の優しい言葉の裏でも、別れる事をずっと考えていたの?
確かに僕は、彼以外の人間には興味もなかったし、目に映らなかった。
だって、それで幸せだったから・・・。
彼さえいてくれれば、世界で何が起ころうと知ったこっちゃなかった。
「ねえ、君、どうしたの?具合でも悪いの?」
声がして目をあげると、見知らぬおばさんが心配そうに僕を見ていた。
「な・・・何でもないです・・・すいません。」
そう言って、その場から歩き始めた。
背中におばさんの怪訝そうな視線を感じるけど、そんな事、どうでもいい。
すでに土砂降りとなっている雨だけど、傘を差すことも今の僕にはおっくうになっている。
周りの人達も僕を不思議そうな顔で見ている。
でも傘なんか差したら、泣いているのが解っちゃうじゃないか。
本当にもう、あの優しい瞳も、声も、唇も、身体も僕には向けられないんだろうか?
そう思ったら、また泣けてきた。
空から降ってくる粒のおかげで多分周りは気付いていないだろうけど。
彼を忘れることが出来る?
いつか違う人を好きになることが出来るんだろうか・・・?
そんな事、今の僕に解るわけない。
だって、彼の気持ちは離れていっても、僕の恋はまだ彼に向いているんだから。
空を仰ぐと雨が僕に集中して降ってくるみたいだ。
涙も雨と一緒に流れてくれないかな・・・。
本当は僕という存在を流して欲しい。
そうすれば、もう何も考えずにすむ。
明日は晴れるのだろうか?
そうしたら、笑えるだろうか?
それでも今はただこの空からのシャワーに当たっていたい。
少なくともこの僕の涙が止まるまでは・・・。

おわり。


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