はまるからだ

三田の部屋のドアがバタンと閉まる。
途端にその中の空気がざわざわとどよめきだして、何とも言えない匂いがしてくる気がする。
「おい、早く服脱げよ。」
三田が自分のシャツをその場に放り投げながら言ってくる。
「ああ。」
俺はのろのろとした動作で制服のズボンを降ろし始める。
「普通、上から脱ぐもんなんじゃねーの?」
「うるせーな、どっちだっていいだろ。」
こいつはどうでもいいことを気にする。
裸になりゃ、その前のプロセスなんて関係ないだろう?
いちいちウザい。
三田はもうとっくに素っ裸になって、ベッドに座っている。
やる気満々で、正直キモい。
三田と俺は別に恋人同士でもなけりゃつき合ってるわけでもない。
そんなこと考えるだけで吐き気がしてくる。
なのにキスはする。
セックスもする。
俺たちがこんなことをするようになったのは、つい1ヶ月前だ。
俺も三田もホモってわけじゃない。
その証拠に2人とも彼女がいる。
事の起こりはくだらない男のプライドの張り合い。
よくある話。
どっちのキスが上手いかとか、どっちが彼女を満足させられるテクがあるかだとか。
「俺に決まってんじゃん。」
三田がトーゼンという顔をするから悪いんだ。
俺がムカッとするのも当たり前ってもんだろ?
「はあ〜? よくそんなことが言えるよな、俺の方が上手いっつーの。」
その後も「俺だ。」「いや、俺の方が上手い。」とか押し問答を繰り返していたら三田が提案をしてきた。
「んじゃ、どっちが上手いか比べようぜ。」
はい? 比べるって一体どういうことだ?
まさかこいつ、スワッピングでもする気なんじゃ・・・いや、それとも4Pでもやろうってのか?
俺は三田の言ってることが解らずそう聞き返すと、変な顔が返ってきた。
変というより軽蔑の眼差しかもしれない。
「江藤って変態だろ? 何でお前に彼女の裸を見せなきゃなんねーんだよ。」
んなこと言われても俺の頭で浮かぶのはそれくらいしかない。
実際それはそれでちょっといいかも、何て思っちゃったりしたのは口が裂けても言えない。
「じゃあ、どうやって比べるつーんだよ?」
「頭ワリーな、江藤は。 一番手っ取り早い方法があるだろ?」
知るか、そんなの。
イライラしてきた。 こいつに「変態」だの「頭が悪い」だの言われる筋合いなんかねーぞ。
この前の中間の点数だって似たようなモンだったじゃないか。
気づくと顔があと10センチの所にきている。
こんなに間近に三田の顔が迫っているのは初めてだ。
意外と睫毛が長いなぁ、とか思ったりしたのもつかの間。
「まずはキスからだよな。」
三田がアホなことを言い出す。
「ああ? 何キショいこと言ってんだ?」
変態はお前だろ?
「江藤、自信がねーんだろ?」
ニヤリと三田が馬鹿にしたような顔をしたからいけねーんだ。
「ざけてんじゃねーぞ、てめえ。」
売り言葉に買い言葉とはまさにこのことを言うんだな。
後先を考えずに俺から三田の唇にブチューっとキスした。
それが俺たちの始まり。
そのキスが気持ち悪かったりしたら、今こんなことにはなっていなかった筈なのにどういうわけだか知らないけど、上手い具合にフィットしちまった。
「おいまだかよ、遅いんだよ。」
三田がベッドをギシギシ揺らしながら文句を言ってきた。
「うるせー。」
あとはトランクスを脱げば俺も三田と同じで素っ裸になる。
ちょっと前までは考えられない、俺たちの誰にも言えない秘め事。
三田の裸は俺よりも少しだけ痩せていて、そのくせにあそこは俺のよりちょびっとだけデカイ。
わざわざ敗北宣言する気はないけど、三田だってきっと気づいてる筈なのに何も言ってこないのはもしかして俺に気を遣ってるわけなのか?
もしそうだったらムカつくな。
自慢された方がまだマシだ。 どっちにしても腹立つけど。
俺がすっぽんぽんになって三田の座っているベッドの隣に腰を置くと、そこだけずずっと沈む。
「俺たちってもしかして変態なんかなー?」
三田がキスする直前にそんなことを俺に訊く。
せっかくその気になっていたのに気分が削がれる。
「ああ、変態の極みだな。 ヤロー同士でやって変態じゃなかったら何なんだよ。」
俺がわざとイヤな言い方をすると三田の眉が八の字になった。
変な顔だ。
「江藤って変態。」
「おめーも変態だ。」
今度こそ俺は三田の唇めがけて舌を滑り込ませた。
男同士の攻撃的な舌が絡み合い始めたら最後、先に離した方が負けだ。
呼吸をするタイミングとかそんなのは解ってるけど、三田の鼻息が掛かるのはあんまり気持ち良くない。
きっとこいつもそう思ってるよな。
だったら早くそのベロを抜けっての。
三田の鼻息が荒くなってきて俺の頬がくすぐったい。
けど俺からは絶対に離さないからな。
言っておくけど、彼女とするときはいきなりディープなんかしないでちゃんとムードとか大切にしちゃって最初は軽めのキスから始めるのが普通だ。
何て言っても彼女のことは愛しちゃってるからな。
けど三田にそんな気遣いは無用、だって愛してないから。
いつまでキスしてりゃあ、いいんだろう・・・。
もう口の中が唾でいっぱいで、どっちのものか解らないから飲み込めない。
キスするのは気持ちいいけど三田の唾液を飲むのはまっぴらごめんだ。
お互いにそう思ってたのか、たまたま俺からキスしたこともあって、下になっている三田の口の端っこからすうっと透明な液体が筋になって流れ出してきた。
三田が苦しそうに俺の肩をぐいっと押す。
と言うことは混ざり合った唾液はニュートンの法則に乗っ取って奴の口の中へ全部入っている。
ごくんと三田の喉が鳴って2人の唾を飲み込んだ。
ざまーみろ。 俺の勝ちだな。
ゲホッと咳き込んで俺をジロっと睨む。
「飲んじゃったじゃねーか、気持ちワリー・・・。」
よっぽど辛かったのか、三田の顔は赤く染まってはぁはぁと息が上がっている。
鼻息は勘弁だけど、口から漏れてくる喘ぎに近い吐息は結構いいかもしれない。
女の子とはちょっと違う、なのに妙にそそられるもんがある。
そんなこと考えてたら俺の息子はムクムクと元気になってきた。
三田のは最初から勃ってるし。
う〜ん、男に欲情しちゃってる俺らってやっぱおかしいのかな?
「なあ、オナる時ってさー、乳首揉んでる?」
三田は変なことを訊いてくる。
「するわけねーじゃん、男が自分の乳首ではぁはぁ言ってたらキモいよ。」
「だよなー。 そう考えるとさー、女って得じゃねえ? 男は一カ所だけでイカなきゃなんねーのに女は二カ所でイケるんだぜー。」
こいつはそんなこと思ってるのか? やっぱり三田は普通じゃねーな。
「何でそんなこと気にしてるわけ?」
「実はこの前彼女とやったときにお互いにオナってるとこ見せ合おうってことになってさー、あいつに「へー、男って胸はほっとくんだ。」とか言われてちょっと気になってな。 もしかしてほかの奴は乳首も使ってんのかなーって。」
俺はそれを聞いて唖然とした。
三田から借りたAVとかも結構マニアックなものが多いなあとか思ってたら、彼女とオナニーの見せ合いっこかよ?
ちょっとこいつ、おかしいかもしんない。
「でも、かなりやばいぜ、彼女のオナってる姿って。 下手すりゃエッチしてる時よりビンビン。」
訂正。
俺も見たい。 今度俺の彼女にも頼んでみよーかなー?
でもあいつのことだから引っぱたかれて終わりかも。
ここは三田で我慢しとくか。
「お前、俺の前でもオナってみろよ。」
三田は俺の頭をチョップしてきた。
「冗談じゃねーよ。 誰がお前に見せるか!」
ちぇ、けちな奴だ。

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