こんなに。

〜横山先生の視点・3〜

「やーめーろー!!!」
バンッ!!!
日下部の悲鳴と殆ど同時に準備室と教室を繋いでいるドアが開いた。
「よ〜こ〜や〜ま〜。 てめー」
チッ。 西尾の奴、帰ってなかったのか。
これ以上ないっていうくらいの三白眼で僕を睨んでくる西尾。 やっぱりどこが可愛いのかさっぱり理解出来ない。
「西尾〜」
「カベちゃん!」
西尾が日下部の方に駆け寄る。 その間に入っていた僕を「どけよ、変態ヤロー!」と押しのけ、日下部の頭をぎゅっと抱きしめた。
僕が変態だったら西尾だって日下部だって変態だ。
「大丈夫か? まだ何にもされてないよな?」
「あ……ああ……」
へ……? な……何なんだ!? このラブラブっぷりは!!
「だから俺があれほど横山には気を付けろって言ったじゃんか!」
何だと? 僕に気を付けろ? 西尾め、そんなこと日下部に吹き込んでやがったのか! 許せんな。
そういえば最近ちょっと避けられてる気がしてたのは牛丼屋の一件があったからじゃなくてそれが原因か?
なんだよ、ばれてんだったらさっさと襲ってりゃ良かった。
西尾は僕の方にキッと目線を上げて睨み、
「このホモ! セクハラオヤジ! エロ教師!」
と僕を罵倒してくる。 でもそれって日下部の事じゃないのかぁ?
「何言ってるんだい? 君達こそこんな事がばれたらまずいんじゃないのかな?」
「ほー、自分が振られたからって今度は脅迫かよ? サイテーだな、横山。 言えるもんなら言ってみやがれ。 その変わりてめーがホモだっつー事も学校中にばらしてやっからなっ!」
むっかー。 ゲイのどこが悪いって言うんだ? 誰にも迷惑掛けてないじゃないか。 生徒に手を出す教師の方がよっぽど始末に悪い。
「ホモはお互い様だろう?」
「はぁ〜? キモい事言うんじゃねーっつーの! 女の子の方が好きに決まってんだろう? ヘンタイ!」
意味が解らん。 それって例えて言うなら僕が女性を好きになるって事と同じだろう?
うげー、そんな事絶対ないない。 あの腫れ物みたいな胸なんか気持ち悪い。 
「日下部先生はどう見ても女の子には見えないよ」
「カベちゃんは特別だっつーの。 な、カベちゃん」
と僕を無視して日下部の方へ笑顔を向けた。 名前の後にハートマークが見える気がして虫唾が走る。
「…………れ……。」
「え? 何? 聞こえないよ」
「帰れ! 2人ともいいからさっさと帰れ!」  
ずっと2人の喧嘩を黙って見ていた日下部がいきなり大声を出してぶち切れた。
「え〜? 俺もー?」
「お前もだ!!」
「何でだよ〜? 俺カベちゃんの恋人だろ?」
…………ん? 今、なんつった……?
「ばかっ! 言うなって言ったろが!」
「あ、ごめーん」
日下部は慌てて西尾の口押さえてるし、西尾は僕を見て勝った! って目が語ってる……。
コイビト……? ってあの恋人ですか?
「え……ええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇー!!??」
僕の絶叫が準備室にこだまする。
「うっせーな! 耳が腐るだろ!」
西尾が何か言ってるけどそんなもの聞こえないくらい僕の頭の中は真っ白なのにぐちゃぐちゃだ。
ちょっと待て! 日下部は単に西尾を抜いてやったんじゃなくて付き合ってるって事なのか!? いつからだ!?
じゃあ、今はしてなくてももしかしたらとーっくにセックスだってしてるんじゃないか?
西尾に告白されて困っているって言ってきた時、既に付き合っていたのか?
あれか? 僕はまさかずっと騙されてたってわけか?
そんなー……! 
「嘘でしょう? 日下部先生、冗談ですよね?」
日下部の肩をがっちり掴んで前後に揺らすと視線を外された。 ……怪しい。
「いや……なんつーか……。」
「嘘じゃねーっつーの!」
「黙れ! お前には訊いてない!」
ごにょごにょしてる日下部ときっぱりと言い切る西尾。 もう答えは出てるって事?
「日下部先生、どうなんです?」
ごほんと咳をひとつしてとーっても言いずらそうに日下部は話し出した。
「まあ……恋人っつーか……こいつがあんまりにもしつこかったからさ、付き合ってみるのもいいかな〜、なんてな」
しつこかったから〜? それじゃ何か? 僕もしつこけりゃいいって事なのか!?
日下部のははは〜と笑って脳天気そうな顔……はぁ……きっと何も考えないでその場の雰囲気とかで決めたに違いない。 ったく下半身人間め。
「解ったか!? 今日からカベちゃんと俺は恋人同士なの! だからおめーの入る隙間なんかこれっぽちもないんだよっ」
ベーッと舌を出して西尾は俺に対してふふん、と生意気な態度をとっているが……ん? 「今日から」って言ったよな……? と言うことはまだセックスはしてないって事じゃないか〜。 
僕はホーッとした。 だったらまだ望みはあるって事だよな。
フッ。 敵に塩を送るような事言っちゃって……まだまだだな、西尾。
「……何ニヤニヤしてんだよ、キモイっつーの!」
憎まれ口ばっかききやがって、これだからガキは困る。 ま、高校生相手に僕が本気出しても大人げないから今日のところはこれで勘弁してやるとするか……うんうん、僕ってばな〜んて立派な人間なんだろうな。
これぞ正に聖職者、生徒に手を出す日下部とは大違いだ。
僕がちゃんと見てやらないと今度こそ日下部が間違いを起こすかもしれない。
盗聴器とか付けちまおうか……? いや、それじゃ犯罪者になってしまう。
きっと今日のように愛の第6感ってやつで気付く筈だ。
それで隙があったら次は僕の番だ。 ぜーったいに日下部を僕のものにしてやるぞー。
教師と生徒より教師同士の方が全く持ってしっくりくるってもんだ。 訴えられるって事もまずないしな。
あ、そういえば日下部ってさっき「しようとしてた」って言ってたからタチって事かぁ? 1回だけネコになった事もあったが自分としてはタチがいいから日下部には受け身になって貰うとするか。
そう考えてふと2人を見比べる。
こいつら……やり方ちゃんと解ってないに違いない。 あ、少し安心したかも。
まさか最初から上手くいく筈もないし。
なーんだ、やっぱり僕が日下部に手取り足取り教えてやらなけりゃダメって事じゃないか〜。
「カベちゃん、横山のやつ、とうとう壊れちゃったみたい。 何か薄気味ワリー笑いを浮かべてる……」
失礼なやつだ。 ……まあ、見てなさい。 僕が日下部の後ろのバージンは奪ってやるから。
そして僕は2人に向かってにっこりと笑顔を振りまいた。
「今日のところは僕が帰りますよ。 じゃ、日下部先生、また後日楽しみにしてますから。」
「……は……? ご……後日……?」
「ええ、それじゃ、西尾くんもさようなら」
「…………」
何だか2人とも呆気にとられてるみたいだけれど、ま、こいつらまだ出来そうもないしな。
今度ここに来る時は花束でも持っていくか。 単純な日下部の事だからそれに感激して案外コロッと落ちるかもしれん。
その時は今度こそ僕が日下部のバックバージン取ってやる。
ああ、楽しみだなぁ〜。 ふふ。
そして僕はスキップなんかして美術室から出て行った。

おわり。   

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これが2万ヒット記念かよ!?って思ってる皆様すいません;
横山救済にならなくてごめんなさい; やはり横山は救済しない方がいいかと
……(笑)
横山の変な人振りが表現出来てればこの話は成功!って事で。
何が記念かというと「ヒトナリ」こと悠斗に出演して貰った事でしょうか?
カベちゃんの変わりに悠斗とエッチをさせてあげたのでこれで我慢して下さい。 因みに夏紀に会う前の遊びまくってた頃の悠斗ですよん。 今は夏紀一筋v
悠斗を知りたい方はどうぞ「夏紀&悠斗シリーズ」を読んで頂ければ幸いですv(CM)