NO.4

裕太は金網を背に座りこんで、
「ひろ、俺にまたがれよ。」
と寛之を誘う。
「お・・・俺が動くのかよ?」
「たまにはいいだろ? それにその方が花火見られるぜ。」
「・・・・・・・・・。」
こいつはっ、こいつはっ。寛之はそう思いながら、仕方なしに裕太の上に乗っかった。
「へへっ、何かいいな。」
「黙れっての。」
寛之は言いながら、裕太にキスをする。
「・・・んんっ・・・」
甘い感触に寛之の瞳はとろーんとなった。
「ひろのその目、好き。 俺にしか見せんじゃねーぞ。」
「ばか・・・。」
「そ、俺ってばかなの。 ほら、口開けな。」
寛之が唇を開くと、そこに裕太は指を突っ込んで濡らす。
舌が当たってぞくっとする。
は〜、ひろってば何て顔するんだよ、自分じゃきっと解ってねーんだろーな・・・。
裕太は充分に濡れた指を寛之の秘部に押し当てて、人差し指を入れる。
「ああっ」
寛之が声を上げると同時に、指でピストン運動をさせた。
「うんっ・・・んんっ・・・」
「・・・もう一本いく?」
そう裕太が聞くと、寛之は涙声になって懇願する。
「・・・も・・・もう・・・いれっ・・・入れて・・・くれ・・・」
裕太は乾き始めた自分の唇をペロッと舐めた。
「ひろの頼みとあっちゃ断る訳にいかねーよな。 入れるぜ。」
指を抜いて、自分のそれを寛之に侵入させた。
「うあっ・・・やっ・・・あっ・・・」
自分の目の前で自ら動いてる寛之に裕太は感動している。
うわー、超エロいじゃねーか、ひろ〜!
寛之は寛之で、何で俺がっ・・・ああ〜、花火終わっちまうじゃんかよー!ばか裕太!と思っていた。
「・・・すげーよ・・・ひろ・・・」
「ばっ・・・ばかっ・・・んあっ・・・」
その時、夜空が一面にまるでその瞬間だけ昼間の様に明るくなり、耳の奥でひときわ大きな歓声が聞こえたかと思うと、その後に静寂が流れてきた。
「おわっ・・・っちゃった・・・じゃねーか・・・」
ムダだと解っていて精一杯に反抗してみる。
「じゃ・・・こっちも終わらせるか・・・俺・・・もう・・・イク」
「はやくっ・・・いっちまえ・・・くっ・・・」
「ひろ〜っ!愛してるよー!」
「ばっ・・・でっ・・・出るっ・・・ああっ」
寛之の射精したモノが裕太のTシャツに付いてしまった。
「あ・・・わりぃ・・・どうしよう・・・」
寛之がすまなそうに謝ってくるのを笑顔で返す。
「別に脱いでくからかまわねーよ。」
「うん・・・って俺はどーすりゃいいんだよ!?」
寛之は自分の浴衣が帯につながれているだけの布と化しているのにやっと気付き慌てた。
「俺、1人じゃ浴衣なんて着られねー!」
キッと裕太を睨むと、
「俺が着せてやるから安心しな。」
余裕で笑いながら寛之をギュッと抱きしめた。
「・・・お前・・・魚臭い・・・。」
「はは・・・しょーがねーじゃん。」
「・・・何で後なんか継いじまったんだよ・・・?」
「は?」
「そんなことしたら、一緒に住めねーじゃんか・・・。」
「ひろ・・・お前・・・。」
寛之は裕太の肩に顔を埋めて見えなかったけれど、どんな表情をしてるのか想像が付いていじらしくなってきて、ポンポンと寛之の頭を軽く叩く。
「大丈夫! 親父達なー、俺が一人前になったらどっかに土地買ってそこで田舎暮らしをするんだってさ。 スローライフってやつ。 だから、俺努力すっからさ、もうちょっと待っててくれよな。」
意外な答えに寛之は顔を裕太に向けた。
「お前・・・まさかその為に大学行かなかったんじゃ・・・。」
「まぁ・・・そればっかじゃねーけどさ・・・。 魚屋に大学は必要ねーじゃん?」
嬉しさの余り寛之の目からポロッと涙が出て来る。
こいつ、本当に馬鹿だ・・・大馬鹿野郎だ・・・。
そして今度は寛之から裕太を思いっきり抱きしめた。
「俺、魚嫌いなんだってば・・・。」
「好きにさせてやるよ。 だから、いつか一緒に暮らそう。」
「何だ、それ。 まるでプロポーズみてー。」
「プロポーズだよ・・・。」
「・・・・・・・・・ばか・・・・・・・・・」


「あら、寛之、お帰りー。」
「ただいま・・・。」
裕太と玄関の前で別れた寛之はぐったりしてリビングのドアを開けた。
「花火どうだった?」
母親が聞いてくる。
「いや・・・まあ・・・良かったよ・・・。」
本当は裕太のお陰で全然見らんなかったけどなっ。
「あら? それどうしたの?」
「え?」
「私が着せた時はちゃんと左前にしたのに・・・あんた、それじゃ死人よ。」
浴衣を見ると、襟が右前になっていた。
裕太が着せたのだ。
「変ねー。」
「いや・・・ほら、人混みが凄くってさ、ぐちゃぐちゃになっちゃって、自分で直したら逆になっちまったみてー。」
ははは、と笑いながら寛之はリビングを出た。
裕太のヤロー!何が「俺が着せてやるから安心しな。」だよっ。ほんっとにばかなんだから・・・あいつは・・・。
そう思いながらも寛之の顔はほころんでいた。
                                         おわり。 

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