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バスルームを出て、夏紀の用意してくれたTシャツとトランクスを着る。
悠斗には少し大きめだ。
キッチンに行くと夏紀が夕食の用意をしていた。
「どうだった?気持ちよかっただろ?」
「ああ、超気持ちよかったー。」
髪の毛をバスタオルで拭きながら、悠斗が答えた。
少しだけ、罪悪感。
「やっぱクーラーがあると快適でいいよな。」
悠斗はその前を陣取って涼んでいる。
「そう?」
「俺んちクーラーないもん。」
「え?そうなの?」
夏紀が驚いて聞き返してきた。
「そんな金ないし、扇風機とうちわだけだぜ。夏は最悪。ゴキブリもしょっちゅう出るしさ。」
掃除をまめにしてないのは置いておいて、とりあえず愚痴っている。
「大変だね・・・。」
夏紀が同情の言葉を漏らしてくる。
「なあ、今日の夕飯何?」
悠斗が聞くと、夏紀は挽肉をこねながら言う。
「ハンバーグだよ。大丈夫だよね?」
「うそっ?ハンバーグまで作っちゃうの?」
悠斗はびっくりしている。
そんなもの家で作る物とは思っていなかったからだ。
「普通、あっためるだけとかじゃねーの?」
「うん・・・まあ、1人の時はね。今日は悠斗くんが来るからね。」
悠斗は何だか嬉しくなってきた。
ーそっか、俺のためか・・・。
夏紀の料理をしている後ろ姿を眺めながら、顔がほころんでいくのが自分でもわかる。
その後ろ姿を見ていると、何だか安心できる気がする。
ーなーんか、変な感じ・・・。
悠斗は久し振りに少しだけ胸が騒ぐのを感じる。
ーあ、ちょっと俺ってばやばいかも・・・。
悠斗がそんな事を考えているとは全く思っていないだろう夏紀は、フライパンでハンバーグを焼きにかかっている。
キッチンに香ばしい香りが漂ってきた。
「もうすぐだから、待っててね。」
「ああ・・・。」
夏紀が声をかけてきたので、悠斗は返事をしたが、あまり聞いていない。
視線は夏紀に向けられているのだけれど。
「はい、出来たよー。」
その声にハッとして悠斗は我に返った。
「ああ、ーすげー、何かレストランに出てきてもおかしくないぜ、これ。」
「そんなこと・・・。」
夏紀が照れている。
皿にはハンバーグとポテトサラダや温野菜が乗っている。
「俺、絶対夏紀さんが女だったら嫁にするね。」
「おいおい、やめてくれよ。」
「ゲイだけどっ。」
悠斗がニカッと笑う。
「ぷっ。」
夏紀もつられて笑う。
「悠斗くんて面白いね。」
「そうかー?それよりさ、悠斗くんてやめない?」
「え?」
「呼び捨てでいいんだけど。」
夏紀がちょっと赤くなった。
「そ・・・そんな・・・まだ無理だよ・・・。呼び捨てなんて・・・。」
「そっか・・・、ま、いいけどさ。」
ーちぇ、真面目だよな、夏紀さんて。
「そのうちな。」
「ああ、ごめんね。」
夏紀がすまなそうに謝ってきた。
そこで少し会話が途切れてしまった。
「あ、ビール飲むよね?」
夏紀が思い出したように聞いてきた。
「うん・・・。」
その後は2人でいつもの様にビールを飲んでそのまま寝てしまった。

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