Page3

 

クーラーのタイマーが切れてしまって、寝苦しくて悠斗は夜中に目が覚めた。
窓の外を見ると、満月の月明かりが眠い目に映って瞬きをする。
ー今、何時だよ・・・?
時計を見ようとすると、ベッドの下にいるはずの夏紀がいない。
いつも悠斗がベッドに寝て、床に夏紀が寝るのがあたりまえになっている。
悠斗は逆でもいいと言ったのだが、夏紀がどうしても承知してくれなかったのだ。
「トイレか・・・?」
丁度喉も渇いていたので、キッチンに行って冷蔵庫を開けて夏紀の作った麦茶を飲もうとしたとき、かすかな物音が聞こえた。
悠斗は音のした方に行くと、トイレにたどり着いた。
ー何だ、やっぱトイレか・・・なげートイレだな・・・。
その時、かすかな吐息が聞こえた。
ーえ?
「・・・はぁっ・・・」
ーやべー夏紀さんてば、やってるよ・・・。気付かない振りをするのが思いやりってもんだよな。
悠斗がそう思ってその場を立ち去ろうとしたとき、自分の名前を呼ばれた気がした。
気になって、悪いと思いつつドアの向こうの声を聞いて、悠斗は驚いた。
「・・・っとっ・・・ゆう・・・っと・・・はぁ・・・」
夏紀が悠斗の名前を呼んでいたのだ。
ーうそっ?俺・・・?
悠斗はその場にしゃがみ込んで、その声を聞いていた。
人の自慰行為なんて目にしたことない。
悠斗は身体が熱くなっていくのがわかる。
ー何だよ・・・夏紀さんてば・・・。言ってくれればいいのにさ。
中での行為が終わったらしく、微かなため息が聞こえてきて、トイレの流す音が聞こえてくる。
悠斗はドアの前に立って、夏紀が出て来るのを待った。
ドアが開くと、夏紀が目の前にいる悠斗を見て、一瞬幽霊でも見たかのように顔面蒼白になり、その後カッと赤くなった。
「どっ・・・どっ・・・」
言葉も出てこないらしい。
「なあ、夏紀さんのオカズって俺なの?」
悠斗はニッっと笑って視線を見据える。
「ゆっ・・・悠斗くん・・・」
夏紀はもう目を合わせられない。
「なんだよ、この中ではちゃんと呼び捨てだったじゃん。」
いたたまれなくなり、夏紀は両手で顔を押さえる。
「ごめっ・・・ごめんっ・・・友達になろうって言ったの僕なのに・・・。」
「夏紀さん?」
「ごめんよ・・・僕・・・僕・・・」
もうすでに泣きそうな顔をしている。
「ねえ、俺のこと、好き?」
「ごめんね・・・悠斗くん・・・。」
ふっと悠斗が微笑む。
「何で謝んの?俺、嬉しいんだぜ。」
「・・・え・・・?」
夏紀が手の隙間から顔を覗かせる。
「俺さー、シャワー浴びたとき、夏紀さんの服着るんだって思ったら、射精しちゃったんだぜ。」
悠斗は優しく夏紀の手を顔からはずしていく。
「今だって、夏紀さんの声で、俺こんななっちゃってるよ。」
顔からはずした夏紀の手を自分そこに持っていく。
触れると手が一瞬ビクッとなる。
相変わらず顔は赤いが、もう悠斗の顔を見つめていた。
「わかった?俺たち相思相愛だったんじゃん。」
「悠斗くん・・・。」
「好きだよ、夏紀さん。」
どちらともなく唇を重ねる。
「・・・ん・・・」
夏紀の逞しい腕に抱かれていると、心が暖かくなっていく。
「ね、夏紀さん・・・しよ。」

BACK← →NEXT