うずくからだ

「ふああー。」
授業の合間の短い休み時間、昨日の夜更かしの所為ででっかい欠伸が口から出た。
何で授業ってあんなにかったるいんだろう? 眠くならないヤツの気がしれねー。
「なあなあ、江藤、お前さー、今日ヒマ?」
俺の前に座っていた宇佐見がくるっと振り向いて話しかけてきた。
折角これから眠りに入ろうと思ってたのに、こいつは人の迷惑っつーもんを考えねーのかよ。
「んだよ?」
めっちゃ機嫌悪そうに宇佐見を睨む。
「合コンやるんだけどさー、人数があと2人足らねーんだ。 お前、誰か誘って来ねーか?」
俺の睨みはどうやら全く効果が無いようだ。 そんなに迫力ねーのかな? いや、そんなことより合コン!?
「相手誰だよ?」
「ん〜? モリジョの女の子達。」
「マジかよ?」
モリジョって言えばかなりレベルが高いって噂じゃんか。(モリジョってのは森丘女子校の略だ) 行きてーな、あと1人か、よし三田でも誘うか。
合コンのフレーズに目がすっかり覚めたぞ。
「どうする?」
「行くに決まってんだろ。 あ、三田を誘っとくわ。」
「おう、頼んだからな。」
俺は宇佐見が見つめる中、自分の席を離れて机に顔を埋めている三田の肩をポンと叩いた。
「・・・・・・チッ、江藤かよ。 人がいい気持ちで寝てたのに起こすんじゃねーよ。」
半分瞼を閉じながら三田は三白眼をこっちに向ける。
「お前今日ヒマだろ? 合コン行かねー? 宇佐見のヤツが2人探してんだってさ。」
「合コン?」
三田は俺の想像とは違って何だか嫌そうな顔をした。 あれ、おかしいなー、絶対にコイツなら喜んで乗ってくると思ったんだけどな。
「行きたくねーの?」
そう訊くと、三田はため息を漏らした。
「最近さー、彼女とちょっとやばめなんだよ。」
「マジかよ・・・何で?」
「だからさー、最近やってねーからさー。」
・・・こいつ、この前からもしかしてやってねーのか?
「先週やれって言ったじゃん。」
「何かやる気失せちゃって・・・。」
「ばっかじゃねーの。 よし、今日は彼女を忘れてガンガンやっちゃえよ。」
「江藤、お前は彼女どーすんだよ?」
「はー? 彼女と性欲は別だろー? 今更何言ってんだ。」
俺がそう言うと三田は肩を落とした。
「お前、見つかったら彼女に刺されるぞ。」
「ばれなきゃいいんだろ? 要するに。」
「・・・・・・サイテー。」
三田の軽蔑した目が俺を映しててむかつく。 てめーだって俺とやってんじゃねーか。 って喉まで出かかったけど、こんなとこでそんなこと暴露したら大変な事になるので止めた。
「なあ、とりあえず人数合わせってことでいいじゃんか、すぐ帰ればいいしさ。」
何で俺はこんなに熱心に三田を誘ってるんだよ、ばかくせー。
「・・・・・・すぐ帰るからな。」
少し時間が空いた後に三田が渋々OKをした。
「ああ。」
三田って結構真面目なヤツなんだと実感。 俺なんか後腐れがなけりゃいくらでもやっちゃうのに。
そんなこんなで俺たちはモリジョの女の子達と合コンすることになった。 もちろん彼女には内緒だけど。


その日の夜学校から一旦着替えに戻って、一応それらしい格好をしてから、金がないのでコンビニに寄ってなけなしの貯金を2万ほど卸した。 成功したときの為だ。
三田を見ると、コイツはマジでやる気がなさそーに適当な服を着てる。 そんなんじゃもてねーぞ。
宇佐見はすげー気合いを入れて、じゃらじゃら音をさせて、俺の見る所によると、どうも安物くさいシルバーアクセまで着けていた。 似合わねーから止めろって。
もう1人隣のクラスの、どうやら宇佐見のダチらしきロン毛のいかにもサーファー系ですって感じの男がいた。 自己紹介の時に山本って言ってたな。 男なんかどうでもいいんだけどさ。
女の子達はさすがモリジョ、可愛い子ばっかだ。
特に俺の好みは麻美ちゃんだな。 目がでっかくてついでに胸もでっかい。 しかもどうやら麻美ちゃんも俺狙いらしい。 さっきからこっち見て合図送ってるし。
やっぱ今日は彼女の事は忘れて麻美ちゃんとやっちゃうしかねーよな、据え膳食わねば男が廃るっつーの。
かなりの酒が入ったところで宇佐見が言った。
「んじゃ、そろそろカラオケでも行きますか。」
「おう!」
三田が一番先に同意する。 こいつ、さっきはすぐに帰るって言ってたくせに酔っぱらっててすっかり忘れてるなー。 でも楽しそうだから連れて来て良かったのかもな。
カラオケに行って気づいたんだけど、2人人数が減ってる・・・。
「ああ、山本の奴、さっきナナちゃんをお持ち帰りしてったぜ。」
宇佐見に訊いたらそう言われた。 ちくしょう、先超されちまった、あんな偽サーファーのどこがいいんだか、女の趣味はわからねーな。
席に座るとさり気なく麻美ちゃんが俺の隣へ陣取った。
「ねえ、途中で抜けてどっか行こーよー。」
甘ったるい媚びを売ってるその声が俺をちょっとだけ白けさせたけど、どうせ一晩だけの関係だし、セックス出来ればどーでもいいか。
「いいよ、もう少ししたらね。」
にっこりと営業スマイルの様な笑顔を作って麻美ちゃんを悩殺する俺。 う〜ん、もてる男はつらいね。
「じゃ、私が歌ったら出よ〜よ。」
そう言って麻美ちゃんは分厚い本とにらめっこし始めた。
「ねーねー、何がいいかな〜?」
俺に訊いてくる。 何でもいいっつーの、俺は君の唄なんかどうでもいい。
「ミズキ歌ってよ、俺、好きなんだよね。」
適当に言ってみた。
「え〜、ミズキ? 難しそうじゃん、麻生ルナでいい?」
「・・・・・・。」
じゃあ、訊くんじゃねーよ、ばーか。 ウザくなってきた。
もしかしてモリジョって顔ばっか良くって頭はからっぽなんじゃねーの?
こんな女、一発やったらそれで終わりだな。
俺がそんなこと考えてたら、奥に座っていた三田の頭が肩にコツンとあたった。
三田はさっきから酔っぱらって寝に入っているらしい。
おいおい、大丈夫かよ、こいつは。
そう思って奴の方に視線を向けると、酒の所為で紅く染まった顔に長い睫毛とさらさらの髪の毛が掛かって俺の肩にもたれている。 安心しきった様子がまるで子供みたいだ。
普段もこんなにおとなしけりゃ可愛気もあるのにな。
俺は三田のおでこに指を付けてデコピンをしてみた。
「う・・・んんっ。」
少し痛そうに呻き声を漏らす。
瞬間に俺の血液が一点に集中してきた・・・やばい・・・。
こいつの酔った顔、良く見りゃあの時の顔とダブってムラムラする。
他の事考えようと思ったけど、そう思うと更に俺の身体は三田に欲情してきた。
俺とやりたがってる女が横にいるってのに何で三田の顔を見て勃起してんだよ。
内心、チッと舌打ちしながら三田の腕をグイッと引っ張って
「三田、大丈夫か? 何? 吐きそう? しょーがねーなー、ほら、俺がトイレまで連れていってやるから立てよ。」
それだけ言って、何が何だか解らないって顔をしてる三田を部屋の外に連れ出した。

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