うずくからだ
NO.2

「何だよ・・・? 俺は吐くなんて言ってねーよ。」
「いいから来いよ。」
足下のふらつく三田を男子便所の個室に一緒に連れ込む。
個室は2つあるから、もし万が一誰かが来ても大丈夫だろう。
洋式の便器に三田を座らせてその上に俺がまたがった。
「江藤、何なんだよ?」
「うるせー。」
三田の口から漏れる吐息を感じながら半開きになってるその唇を思いっきり吸った。
「なっ・・・!」
眠そうだった三田の瞳に驚きの色が出現。
チュバっという音が壁に響いて、キスしてる実感が湧いてくる。
誰かが入ってきたら平気だと思ったけど音と声でかなりやばい。 きっと中でなにしてるかなんてすぐに解っちまう。
「なにすんだよ!?」
「やらせろ。」
「ああ? 今日は合コンなんだろ? 女としろよ。」
そうだよ、そのつもりだったのに、三田のお陰で全部予定が狂っちまった。
「あんな女より、お前抱く方がいい。」
ああ、三田の身体が欲しいんだよ、俺は。
「変態。」
変態でもなんでもいいから、堪らなく俺は今、お前とやりてーんだよ。
「お互い様だろ? ほら、やらせろよ。」
三田のシャツをめくり上げようとする俺の肩をぐいっと押して抵抗してきた。
「・・・トイレなんてやだね。」
「贅沢なヤツ・・・。」
俺のこの高ぶりをどうしてくれんだよ? 
もう一回、今度はベロを入れてやった。
「んんっ・・・。」
舌と舌が絡んでいやらしい音が耳に入ってきて、身体が疼いてどうかなりそうだ。
はぁはぁとお互いに息が苦しくなってくる。
「や・・・やめろってばっ!」
三田がドンっと俺をドアに押しのけて立ち上がった。
「ここじゃ・・・絶対にいやだ。」
「・・・・・・。」
俺はトイレでやるのを諦めるしかない。 ここで無理矢理やろうとしても狭いし股間蹴られたら一貫の終わりだ。
「・・・でもお前んちまで持ちそうにねーからな。」
「・・・・・・?」
「このままホテル行くぞ。」
「なっ・・・なっ・・・そんなことしたら絶対にホモだって思われるっ!」
「うるせーな! だったらその辺の公園でやるか?」
「!!」
俺はどうしても三田と今、セックスしたい、お前にぶち込んでやりたい、そのやらしい顔に俺のザーメンぶちまけたい。・・・はは、俺ってやっぱ変態だな。
三田はこのままじゃ俺に強姦でもされると思ったたらしく、おとなしくなった。
「・・・・・・ホテルでいい。」
「じゃ、ソッコー、ラブホ行こうぜ。」
俺は三田の腕をひっぱり、部屋に戻って
「ワリー、三田が気分悪そうなんで俺、送ってくわ。」
と言い捨ててさっさとカラオケを後にした。
「え〜、江藤くん帰っちゃうの〜?」 とか女の声がしたけど無視。 お前なんかより三田の方がよっぽどエロい。 俺は媚びる女が大嫌いだ。
俺の彼女はその点さっぱりしてて最高の女だ。 これから三田とやろうっていうのに説得力ゼロか? 俺は最低の彼氏かもな。


外に出ると大勢の人間が行き交っていて、少し歩くとホテル街になる為かカップル率が高い。
その中で男2人の俺たちはかなり目立っている気がする。 しかし、そんな事で俺の性欲は萎えない。 っつーか他人なんてどうでもいい。 だってこれから隣にいるこいつとラブホに行くんだからな。
「おいっ、マジかよ? なあ。」
三田はまだ躊躇している。 人間、諦めが肝心という言葉を知らないのか?
「しつけーな、てめーは俺よりも他人の目の方が気になんのかよ!?」
「当たり前だろ。」
だーっ! こいつもウザいから無視。
乗る気じゃない三田の腕を引っ張りながらホテル街までたどり着いて、何軒もあるホテルから適当な場所に入った。
途中、何組ものカップルが俺たちを興味深そうに振り返って「・・・ホモ・・・?」とか言う声が何度か聞こえてきた。
それにプチッと切れた三田は、一回だけ「ちげーよ、バーカ! 死ね!」と捨て台詞を吐いていた。 俺はケンカにでもなるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしたが、相手の男が気弱そうな奴で、そう三田に言われて逃げて行った。 あー良かった。
彼女とセックスするときは殆どラブホですませる。 俺も彼女も母親が専業主婦でずっと家にいる所為だ。 お陰で俺のバイト代は殆どがラブホで消えていくという哀しい事になっている。 たまに青姦もするけど。
三田の家は共働きなので自然とヤツのベッドが俺たちの性欲処理場になっている。 彼女ともそこでやってるのかと思うと変な感じ。
ホテルの中に入ると、どうやらそこは部屋をパネル式で選べるシステムになってるらしい。 ちょっと胸をなで下ろす。 少し古いホテルだと受付で鍵をもらわなきゃならないところもあって、そーゆー場所だとやっぱちょっと入りにくいから。 って言ってもどっかに防犯カメラがあって中の人間には男同士ってバレバレだと思うけどさ。
「何処がいい?」
俺が訪ねると三田は拗ねて、
「一番高いとこ!」
と言い出す。 んな金ねーっつーの。
無視して一番安い部屋のボタンを押そうとしたらそこは既に売約済みだった。 チッ、彼女とエッチするときくらいもっといい部屋とれよな。
仕方無いので真ん中くらいの「休憩7000円」の部屋のボタンを押した。
パネルの明かりが1つ消える。もう明かりの点いてる部屋はあと2つしか残っていないからこのホテルの中では今、17人の女が男を招き入れてひぃひぃ言ってる計算だ。 そこに俺たちが仲間入りをして俺は男をひぃひぃ言わせようとしている。 行為はさして違わないのに性別が違うってだけで303の部屋だけ禁断の園だ。
部屋に入ると明かりがパッと点く。 さあ、おいでと手招きをされているよう。
中を見渡すと、どうやらブルーを基調とした海のイメージがこの部屋のコンセプトらしく壁にはイルカの絵が描いてあって、ラッセンを真似ているみたいだったけど偽物臭さが抜けない安っぽい絵だ。 この空間にはお似合いだな。
ドアの右手にはトイレと風呂があって、左手に申し訳ない程度の小さめのテーブルと椅子、その壁にはテレビがあっておまけにカラオケ用のマイクまで用意されている。 彼女とエッチするときは、たまにテレビのアダルトチャンネルを見てそれを興奮剤にすることもある。そんでその奥に主役の大きなベッド。 俺たちに必要なのはその空間だけ。
三田とのセックスにエロビデオも必要ない。
どんなAV女優よりこいつの方がエロいから。 
その手入れのされてない眉も、俺を見る潤んだ瞳も、鼻も、厚めの唇も、顔のパーツ全てが興奮させる。
そう思い始めたのはこいつとセックスするようになってからだ。
最中のあの顔はきっとどんな女もかなわない。 ベスト・オブ・エロの称号を贈呈したいくらいだ。 そう思ってんのは俺しかいないけど。
その顔を知ってるのは世界中で俺だけだから。
だけど三田はヤツの彼女のもの、そして俺も愛する可愛い彼女のもの。
それでもこの瞬間だけはこいつは俺のものだ。

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