〜生徒の視点・3〜
俺は美術準備室の前に突っ立っていた。
もうガマン出来ない。 こんなんじゃ諦めきれないからな。
毎晩毎晩夢にまで日下部が出てきやがるんだぜー! 起きるとアレまで起きてるしっ。
これはもう1度逢って話しを付けるしかない。
じゃないと俺はオナニーのしすぎで、そのうち死んじゃうかもしんない。
そおっとドアを開けると、日下部はぼ〜っとしていた。
ちぇ、いい気なもんだよな。 俺がこんなに心を痛めてるっていうのにさ。
「カベちゃん……」
声を掛けたけど、全く気付く様子がない。
「カベちゃんてば」
もう1度、今度は少し大きな声を出すと、ハッとしてこっちに向いた。
何だよ? その顔は?
「……西尾……お前……」
何か言われる前に早く用件言っちまおう。
「俺さ……ずっと考えてたんだ。 どうやったらカベちゃんを諦められるのかなって……でもやっぱ無理みたいなんだ」
「……だから、俺はお前に……」
やだっ! 日下部には何にも言わせない!
俺の頼みを聞いてくれるまで何にも言っちゃダメだ!
「解ってるよ、だから……1回だけ……1回だけでいいからキスしてくんない? そしたら俺すっぱり諦めるからさ……」
ダメだって言われても、そしたら無理にでも俺から奪ってやるーっ!
「鍵、締めろ」
へ? うそ〜っ? 鍵締めろって……キスしてくれんの〜?
日下部は横を向いて、机をじっと見つめている。
俺は急いで鍵を閉めた。 気が変わっちゃうと嫌だから。
そうしてゆっくりと近づいた。
せんせーとキス出来るとと思ったら、もー、胸はドキドキしてるし、脈は早鐘を打っている。
フーッと1つ息を吐いて椅子に座ってるせんせーの目の前に立つ俺に言った。
「……俺は大人だからな、どんなことになっても後悔しないんだな?」
ごくりと俺は生唾を飲み込んだ。 自分から誘ったくせにすっげー緊張してる。
せんせーがそんな言葉を言うからだ。
「どんなこと」ってどんなこと? 取り敢えず頷いてみる。
「うん……」
「絶対に他言無用に出来るな?」
「うん」
ちょっとだけ怖くなってきた。 俺が童貞だってこと、まさか気付かれてないよな……?
なのにじっと俺を見つめて言いやがった!
「お前……初めてなんだろう?」
うっそー!? ばれてんじゃん!!
一気に恥ずかしくて真っ赤になった。 くやしいっ!
知られたくなかったのにーっ! 自分が子供だってことを思い知らされる。
せんせーは大人なんだ、何でも知ってるんだ……。
してやったりって顔してるしっ! ムカつくけど……好きなんだからしょうがないじゃんか。
はぁ〜……キスしてもらったら諦めよう。 とっても太刀打ち出来ない気がしてきた。
せんせーが立ち上がって俺の頬を両手で包みこむ。
うわー、俺ってばキスしちゃうんだー。
震えちゃってる? 嫌だ〜、余裕がなくて格好ワリー。
そっと触れたせんせーの唇はとっても柔らかくってあったかい。
キスってこんな感じなんだぁ。 今までしなかったのはきっとせんせーとファーストキスする為にとっておいたって思っちゃったぜ。
ああ、俺ってマジでロマンチストかも〜。
好きだ〜! やっぱり諦められないかも〜。
1週間悩んだのにこんな簡単にキス1つで決心が揺らぐなんて、キスって凄い威力があるんだなぁ。
どうしよう? どうやってそれを切り出そう?
すんげー怒られそうだよなぁ。
唇を離すと、直ぐにせんせーが言ってきた。
「口、開けよ」
「え?」
いきなり俺の口の中に舌が入り込んできて、びっくりしてせんせーの首にしがみついた。
どっ……どういうことだー? これってディープキスってやつだよな!?
「んっ……」
どうしよう!? 嬉しいけど、こんなの予定に入ってなーい!
しかも舌が絡み合ってる間に机の上に押し倒されるし!!
な……何でぇ?
もう何が何だか解らなくて口の中がとろけそうに甘い。
だけど……だけど……。
呼吸困難になりそうだー! 苦しいっ!
「カ……カベちゃん……」
あ〜あ、唇離しちゃったぜ。 もっとしていたかったけど、そしたら息できなくて死んだかも……。
そんな俺にアドバイスをくれた。
「鼻で息すれば苦しくならないからな」
そっかー、よく考えたら鼻はくっついてるわけじゃないもんなぁ。
俺ってばかじゃん。
「うん……。 なあ、俺と付き合ってくれんの……?」
だってこんなキスしたんだから……もう1度だけ訊いてみよう。
もし望みがなくても、ありんこくらいの隙間があったらそれにすがっちゃる!
そしたらせんせーは吹き出した。 酷い! 俺は決死の覚悟で訊いたのに。
「今更……お前ってやつは……」
そう言ったせんせーの顔はめちゃくちゃ優しい。
でも、今更ってどっちに解釈すりゃいいんだよ?
「だって……」
「しょうがないからお前と付き合ってやる。」
ええええええ〜!? マジで!? もしかして俺の唇が気持ちよかったからか?
だってあんなに俺を拒んでいたんだぜ? 信じらんない!
「本当……? カベちゃんが俺の恋人?」
付き合うってことは俺の恋人ってことだよな? な? なー!?
うわ〜、「秘密の恋人」だ〜。
もうホモでもなんでもいいぞ、こんちくしょう!
「こんなにしつこいやつ、初めてだからな。 それに俺の夢は生徒とチャンスがあればやることだしな」
そう言ってニヤリと笑う顔はどう見ても……。
「……何かどっかのスケベオヤジみたい……」
横山と同じくらいスケベそうな顔だ。 「どこがいいんだ?」って言った兄貴の言葉が浮かんできやがる。
「言ってくれるじゃないか。 そうさせてるのは誰なんだよ?」
俺? 俺しかいないよなっ。 どうしよう、すんげー嬉しいっ!
それにさ、スケベ顔させてるってことはさー、つまりはせんせーのこと……。
「俺、カベちゃんを欲情させてんの?」
そう訊くと、何も言わずに下半身をくっつけてきた。
ぎゃ〜っ! 勃ってるよ! 固くなった2人のモノがぶつかってるっ!
やばっ、感じてきた……。
「……あ……先生……」
思わず声が出ちゃったぞ〜。 しかも「カベちゃん」じゃなく「先生」だってさっ。
やっぱりカベちゃんより先生って呼んだ方がエッチっぽく聞こえるよな〜。
なんつーの? 禁断の恋って感じぃ? うわーやらしい。
そんなこと思ってたら、せんせーは俺のシャツをまくり上げている。
ええ? キスだけじゃないのかよ?
まさかこれからやる気? マジですか、先生!
俺の童貞は美術準備室で奪われちゃうのか?
どうしたらいいんだ? 初めてってこと解ってるんだよな?
せんせーが俺の乳首を触り始めると、ゾクッと背中に寒気を感じて、のけぞった。
「やっ……」
胸を揉まれただけで気が遠くなりそう……。
身体の奥がジンジン痺れてせんせーの唇と舌が触れるだけでどうにかなりそうでホントいうと凄く怖い。
指で鎖骨とか背中を撫でられるとそれだけでイッちゃいそうになる。
俺は何てバカなんだろう。
AVとかエロ本とか見てセックスなんて解った気でいた。
でもそんなもの、これっぽちも役に立たないことをせんせーに知らされちまった。
気持ちいいとか快感とかそんなんじゃなくてもう、もう、ただひたすら怖い。
怖いのはせんせーじゃなくて自分自身だ。
身体と心が1つになんなくて、コントロールなんか全く利かなくって、自分が自分じゃなくなる感覚。
なあ、せんせー、俺このままだったらどうなっちゃうんだよー?
ずっと脂汗と冷や汗が後から後から滲み出ていて、止まんない。
ふわっとせんせーの手が俺の額を優しく撫でてくれたから、それまでぎゅっと瞑っていた目をちょっとだけ開けると、微笑んだ顔が目の前にあった。
「大丈夫だから……どうして欲しいか言ってみな。 ん?」
意地悪だ! どうして欲しいかなんて余裕のある人間が言うセリフで、チェリーボーイの俺にはそんなこと……。
「……っかんない……解んないっ……」
その言葉をただ繰り返すばっかりだ。
そんな俺に目の前の大人は言う。
「そうだよな、じゃあ、俺に身体を預けられるよな?」
コクコクと頷くしかないじゃん! 「も〜、ど〜にでもして〜♪」って歌うしかない。
腕をせんせーの首にまわすと、まるで赤ちゃんが何かに触ってると安心するみたいに、俺は少しだけ自分を取り戻せた。
なのに落ち着くヒマもなく、胸に触れていた指をいつの間にやら俺の下半身に滑らせていた。
はーっ! 慣れていらっしゃる!
ホントにホントに今日、するのかよ?
心の準備ってもんがこーゆーのって必要じゃないのか?
ムード作りとかさぁ。
女の子ってみんなバージンを誰かにあげるときってこんな感じなのかな?
そうだよ、俺は童貞喪失っていうより処女喪失って気分になってるぞー。
「んんっ」
ディープキスをされて、遠くの世界へ行こうとすると、俺のベルトが外されて、素早く引きずり下ろされた。
……ハッ! ちょっと待ってくれ、確か……確か今日履いてるトランクスって……。
時、既に遅し。 プッと笑われた!
「そ……それっ……お袋が……」
今日の俺のトランクスは、お袋がどっかのスーパーの3枚1000円とかで買ってきたやつで、大漁とでっかく描かれてるんだー!
だってまさかこんなことになるなんて予想もしてなかったからっ。
知ってたらブランド物のボクサータイプのやつでも履いてきたのに……。
俺はあまりの恥ずかしさに、トランクスを手で隠そうと思ったら、せんせーの左手でぐいっと頭に持っていかれた。
「せ……先生……やだ……」
人でなし〜! 俺のトランクスが子供じみててバカにしてるんだっ。
「うぁっ……」
トランクスの上から俺の形を手でなぞっている。 指が動くたびにゾクッとして何でか腰が浮いちゃうんだ。
せんせーはその指で一体何人の女を啼かせたんだ?
何人に触ってもらったんだよっ? ああ、それにフェラとかだってやってもらってるんだよな……。
それにもしかしたら俺には想像も出来ないすんごいことだってやってるかもしれない。
ちっくしょー! 羨ましいぜっ!
俺ってもしかしてこのまませんせーとずっと一緒だったら、女を知らずに年とんのかなー? それじゃマジホモになっちゃうじゃん!
違うんだー! 女の子が好きだけど、それ以上にせんせーが好きなだけなんだー!
日下部〜、何で男なんだよー!
ん? 今はどっちかって言うと何で俺が男なんだよー! が正解か?
せんせーが俺のトランクスをまじまじと見てるから、やばいぞ……ガマン汁が滲んできた。
これって視姦っていうやつなんじゃないか!?
何もしてくれないのに視線が突き刺さるようで、身体が疼く。
こんなこと、1人じゃ出来ない。
恥ずかしくて死にそう……。
お願いだから……せんせーってばっ!
なのにこのエロオヤジは更に変態なことを言い出す。
「あーあ、汚れちゃってるぞ、そんなに俺にして欲しいのか?」
「んーっ……やっ……あ……」
もうこれ以上は耐えられなくて、声を上げた。
早く……早くなんとかしてくれよっ!
「俺に触って欲しいか? 西尾。 自分で言ってみな」
「あっ…………はぁっ……って……」
今度は言葉責めだっ! 何てやなやつなんだ、日下部っ!
けど俺はこいつのおもちゃみたいに言われるがままになっている。
もう、哀しいやら悔しいやら恥ずかしいやらで、目尻から涙が溢れてきた。
「聞こえないぞ、ちゃんと言え」
「……さわっ……て……せんせ……えぇ」
これが限界だ〜。 息が苦しくなるし、身体の感覚も消えちゃいそうで恐怖だった。
見られてるだけだったのに、俺ってどうかしちゃったんだろうか?
懇願が通じたのか、せんせーは俺のトランクスを膝まで下ろして、ピクピクと痙攣を起こしていたそれを握ると、手のひらでピストン運動を始めた。
凄い……自分でやるのと人にやって貰うのとじゃ全然違うんだ。
自分がまさか女みたいな声を出すなんて思ってもみなかった。
手で扱かれてると、俺の身体も上下に揺れる。
それをせんせーがしっかり見ていて、羞恥の所為で目を瞑りたくなってきた。
「いいか? 西尾、気持ちいいか?」
「も……う……おかしくなるっ……やだ……あっあっ」
俺の口の中にせんせーの汗がぽたぽたと滴り落ちてきて、ちょっぴり塩の味がした。
確か、俺は今日、キスしてもらってそれで諦めて帰るつもりだったのに……一体全体なんだってこんなことになったんだっけ?
……そうだ、俺に欲情してくれたからだ。
だからっていきなりセックスするか?
もしかしてせんせーはかなり手が早いとみたぞ。
まさか今までの教師生活の間にとっくに何人か食っちゃったんじゃねーか?
ありえるから恐ろしいよな、先生。
……でも男で欲情したのは俺が初めてなんだよな。
だったらそれでいいや。
「あっ……あっ……あっ……」
俺はもうただただ喘ぐしか出来ない。 声を出すことで唯一存在が自分で確かめられるから。
せんせーの息づかいが激しくなってくると、俺の声も激しくなる。
一緒なんだ。 今、俺が感じてるのは愛しの日下部先生なんだ。
なあ、せんせーも俺の声とあそこで興奮してんの?
「もう、イクか? イキたいか?」
「んっ……も……俺、ダメ……」
そう言うと、せんせーの手の動きがスピードアップする。
ぼやけてきた目で見ると……ん?……何か企んでる顔をしてない?
ま、いっか〜! そんなことより……。
「いっ…………い……くっ……あっ」
目の前を俺のザーメンが飛び散った。
……達してしまいました。 せんせーの手の中で……ああ、これが幸せってやつだよなー……。
あ、しまった。 床にべったりこぼしちゃった。
「ご……ごめん……いっぱい出しちゃった……」
「いいさ、それより今度は俺の番だからな」
「や……やっぱり痛いかな……?」
だってあの雑誌によると、今度は俺の尻にせんせーの勃起したモンが入ることになってるんだぜ。 痛いよなぁ。 血とかも出ちゃうんだろうか?
「痛くないようにしてやるから待ってろよ」
そう言って日下部は何かを探し始めた。
な……何をする気なんだ? まさか変な道具とか使ったりしないよな……?
とか考えてたら、ドンドンとドアを叩く音が聞こえた。
「日下部先生! いるんでしょう? 開けて下さいっ!」
うわっ! 横山だ! すげータイミング。 絶対こいつ聞き耳立ててるに違いないぞ!
日下部は慌ててきったない布を俺に放り投げてきた。
「これで汚したとこ拭いておけっ」
「え〜? こんなばっちいので拭くのかよ?」
俺の繊細な亀ちゃんをこんなので拭くのか? ビョーキになったら責任とれよな。
「贅沢言うなっ、早く拭けってば」
俺は「最悪〜」と言いながらべったり付いた精液を拭ってトランクスとズボンを履き直した。
「西尾くんも一緒なんですね? 鍵なんか閉めて2人で何やってるんですか!?」
ったくこれからって時に、何でおめーはそうやって邪魔ばっかりすんだよ?
ドアが壊れちまうじゃないか!
「カベちゃん、横山のやつうるせーから開けるよ」
「あ……ああ……」
俺がドアを開けた瞬間に、勢いよく横山が入ってきた。
「な……何ですか? 横山先生」
「どうして鍵なんか掛けてたんです?」
横山に睨まれて、日下部はビビッてるしっ。 だらしねーぞ。
「ちょっと西尾に相談を持ちかけられまして……」
「何の話で?」
と訊かれてもごもごして、しょーがないから俺が変わりに答えてやった。
「何って……ナニ?」
もっちろん2回目の「ナニ?」は語尾を上げてやった。
ひひひ、ばーかばーか! てめーがいくら俺に睨みを利かせたってぜ〜んぜん怖くなんかねーんだよ!
だって、俺は日下部の恋人になったんだからなー!
おめーなんか1人寂しくオナニーしてろっつーの!
「あ……あの……部活のことで……」
日下部の情けない声がしたけど、横山のケンカを買うので精一杯なのっ。
後で入れさせてあげっから待ってろよ〜。 俺の愛しの日下部先生〜!
〜えんど〜
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こっちは西尾の視点で書いたものです。なかなか楽しめたな〜。セリフが殆ど一緒なので、読み比べてみるのもいいかも……(^^)
しかし、果たしてこれはコメディとしてなりたってるのでしょうか……? そして横山は攻めなのか?受けなのか?
疑問は残るばかり……。 あ、エッチになると「日下部」から「せんせー」になるのはわざとなのよ。
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